3.03 横穴探検の装備
ヘルメット
洞窟内では注意していても頭上の岩に頭をぶつけることがある。とくに落石対策として絶対不可欠なものだ。ヘルメットを選ぶポイントは、フィット感がよく、あご紐がしっかりしたもの。
ケィビング専用のものがベストだが、ヘッドライトが装着できればクライミング用のものでもよい。また、工事現場用の通称ドカヘルも入門者レベルの横穴であれば問題ない。ただし、バイク用などのフルフェイス型は使用できない。
クッション部分がスポンジではなくテープのタイプであればヘルメットの中にスペースがあるため、レスキューシート等の軽いものであれば入れておけるので便利。
ヘッドライト
ケイビングの装備を極限まで切り詰めていって最後に残るものはといえば照明だ。家庭に常備している懐中電灯でも使えないことはないが、いくつか問題もある。まず手に持たなければ使えないから、足場の悪いところでは不利になる。また、洞窟には水場も多いので防水処理が施されていないと故障の原因にもなる。ということでケイビング用には防水処理が施されたヘッドライトを使用することを勧める。以上に加えてなおかつ明るく、コンパクトで軽量、かつ対衝撃性にすぐれたものであれば最高だ。
明るさは最低でも200ルーメン程度はないと足元をはっきり見ることが出来ない。またスポットで当たるようなライトは、光が当たっているところは明るいが他の部分が暗いため使い勝手が悪い。メインのライトは光が拡散するようなものを選ぶと便利。
予備ライト
電池は使えば消耗して、いずれなくなる。暗闇の洞窟でそんなことになれば深刻な状態となる。あわてないためにも、予備ライトは必ず携帯すること。メインが絶対に故障しないという保証はないし、メインライトの電池交換が必要になった時にも便利だ。予備ライトは緊急用という位置づけなので明るさは必要ないが、いざというときに故障していましたでは話にならないので防水は必須。
可能であればお客様にも予備ライトを持たせたいが、厳しい場合はガイドが1~2個予備ライトを持っておき、必要に応じてお客様に渡す。ガイド中はガイドのライトの電池切れよりも、お客様のライトの電池切れや故障の方がよく起こる。
その他の照明機材
洞窟によっては水の綺麗さや空間の大きさをアピールするために強力なライトが必要になるケースもある。その際はダイビング用のライトが便利。ただし、製品によっては水に濡れていないとオーバーヒートするものもあるので、事前に説明書を確認したりしばらく点灯してみる必要がある。
エマージェンシーキット
可能であればレスキューシートと非常食は常に携帯しておくべき。洞窟で最も発生しやすいのは何らかのアクシデントで待機時間が長くなり体が冷えてしまうケース。その場合は何かを食べてレスキューシートにくるまることで体を温めることが出来る。
また擦り傷・切り傷・打ち身等の怪我をすることも多いため、洞窟の入り口や車の中に救急セットを常備しておく。
つなぎ
観光洞のように衣類を汚すことなく奥へ進めるケイビングなどないと思っていい。必ず汚れるケイビングでの服装は機能性が最重視される。ふつうの服では狭いところをくぐり抜けるときなどに腹がめくれ上がるし、服を汚したり傷めてしまうことがある。
素材は綿のものでもいいが、綿とポリエステルを混紡したものが丈夫で乾きも早い。汚れてしまえば同じかもしれないが、色は黄色やオレンジなど、できるだけ視認性の高いものを選ぶのがベターだ。
海外通販ではケイビング専用のつなぎが販売されており、丈夫で水を通さない素材のつなぎを購入できるが、綿のつなぎに比べてかなり高価。
インナーはフリースが安くて暖かくて乾きやすいのでコスパが良い。フリースの上下をつなぎの下に着ておけば国内の大抵の洞窟は問題なく探検できる。
下着は洞窟の環境に適したものとして、ナイロンやポリプロピレンなど、速乾性と保温性のある化繊がお勧めだ。綿製品は濡れると乾きにくく、気化熱で体温を奪うので注意。
完全に水に入るのであればウエットスーツを着ると寒さがかなり軽減される。だが水以外の場所でムレてしまい汗のかき過ぎで脱水症状になってしまうこともある。また生地が固いため動きにくい。
膝あて、肘あて
洞窟では岩でゴツゴツした床の上をハイハイの体勢や匍匐前進で進むことが多いので肘や膝が痣だらけになる。特に女性は男性に比べて痣が残りやすい人が多い。そのため膝あてや肘あてをお客様に貸し出すとツアーの満足度が上がる。
靴・靴下
洞窟で使用する靴は、洞窟特有の粒子の細かい粘土に対して滑りにくくするためにも靴底のパターンが荒いほうがいい。足首やくるぶしを保護できるハイカットの靴で、石のゴロゴロした感触が伝わらない程度に底が厚いものを選ぼう。同時に、岩登りにもある程度適した靴のほうがいいし、水につかることが多いので、水はけのよさや保温性も重要となる。
軽登山靴やトレッキング・シューズは、ワイヤーラダーを使うときに靴紐のフックがワイヤーにはさまることがあるので、全部がハトメになっているものがいい。もちろん、びしょ濡れでドロドロになるのは間違いないから必ずしも皮革製品である必要はない。
ゴム長靴の愛用者も国内に多い。少々の水たまりであれば快適だが、深い水たまりで浸水すると、バケツを足に履いているような状態になってしまう。沢登り用のフェルトソールは、洞窟特有の細かい粘土にやられてツルツルになる。また、金属スパイクや金属がソールに付いている靴は岩で滑るし、氷穴以外でのアイゼンの装着も生成物などを傷つける恐れがあるので避けたい。
一部のキャニオニングシューズは洞窟での使用にもある程度耐えられる丈夫なものもあるので、お金をかけてでも快適に探検したい場合はおすすめ。
靴下は濡れてしまうことを前提に考えて、速乾性のいいものやネオプレーンのものなどを組み合わせるといい。
手袋
鋭い岩を握ったり床を這って進むときには手袋がほしくなる。手袋もびしょ濡れでドロドロになるから、比較的安価な軍手が惜し気なく使えて人気がある。ロープを使うときには、掌に部分的にゴムの滑り止めがあるゴム手袋がよく利用されている。
ただし手の甲もゴムになっているものは柔軟性が悪くロープの扱いには向かない。人によっては引っかけや濡れに強い高級皮革の手袋を使用したり、薄手の化繊軍手にゴム手袋を重ねたり、ネオプレーン製手袋に指を切った軍手を重ねるなどの工夫をしている。
ホイッスル
通常時に自分の位置を知らせるには声で十分だが、緊急時で体力がないときや激流で周囲の音が大きいときはホイッスルがあると重宝するためガイドだけでも携行すること。
時計
ツアーのペースを確認したりするときに便利。腕につけるとかなりの頻度で岩にぶつけるため、耐久性のないものであればホイッスルと一緒に首からかけておくと壊れにくい。
カメラ
お客様の思い出を残すためには必須の装備となる。岩にぶつけたり水の中に浸けたりするためアウトドア用の頑丈なものを使用する。また常に暗いところでの撮影になるため、夜景など暗いところに強いカメラの方が綺麗に撮れる。