5.03 ツアーの進め方
概要
ここではツアー全体の流れと注意点を解説する。参加者は楽しい時間を過ごすために料金を払ってツアーに来ているため、怪我をしたり時間ロスがあると満足度が下がってしまう。そのため安全に・段取り良くツアーを進行するためのポイントを解説する。
アプローチ・洞窟内での注意点
セーフティトーク・ブリーフィング
着替えが終わってアプローチを始めるタイミングでセーフティトークやブリーフィングの時間を設けて、参加者にツアーの進め方や注意点を説明する。主な説明内容としては以下のようなものになる。
- ツアーに関する情報
- ツアーの目的と見どころの紹介
- 予定されているルートと所要時間の説明
- 休憩ポイントと食事のタイミング
- ツアー中の注意点
- グループ内でのコミュニケーションの取り方
- 洞窟内での写真撮影のルール
- 環境保護
- 洞窟内の動植物への配慮
- ゴミの持ち帰りと環境への配慮
- トイレに関して
- その他、洞窟内の自然環境を守るためのルール
- 安全対策
- 緊急時の対応方法と連絡先の共有
- グループの行動ルール
- 水分補給とエネルギー補給の重要性
- 体調不良時の対応方法
進む速さに注意する
参加者の速度に合わせてペースを調整する。無理のない速度で進み、参加者が疲れないように配慮する。20〜40分程度で一度休憩を取り、衣類や靴ひものチェックを行う。休憩は50分歩いて10分休憩というペースを厳格に守る必要はなく、参加者の状況を見つつ適時取り入れる。
危険箇所で声を掛ける
事前調査で危険箇所と判断した場所で、参加者にどのような場所であるか・どのように危険を回避すればよいかを説明する。危険箇所は一人ずつ通過するようにし、参加者から目を離さないようにする。必要であれば声掛けやロープ等での補助を行う。
ガレ場や濡れた岩の上は滑りやすいので注意喚起をする。必要であれば地面にお尻と手をついて慎重に移動するよう指示する。
天井が低い場所では天井の生成物に頭や背中をぶつけて怪我をするリスクが有るため、姿勢を低くしたり四つん這いになって進むよう指示する。
滑落の危険性がある場所では段差に近づかないよう指示する。万が一転倒したときのことを考慮し、十分に広さがある場合は滑落する位置から身長分だけ距離を取ったところを安全地帯とする。安全地帯を確保できない場合は補助ロープやハンドラインの設置を検討する。
段差を登ったり降りたりする場所では、通過中の人が落とした石が下の人に当たる可能性があるため、段差の真下には近づかないように指示する。
また段差の下で上を見上げると落石が顔に直撃するリスクがある。段差の下を離れるまで上を見上ず、顔を正面に向けたまま速やかに段差を離れるよう指示する。
周囲を観察する
登山に比べれば洞窟内は環境が変化しにくいが、それでも崩れやすい岩の位置や水位は変化している可能性がある。前回のツアーと比べて変化した部分があれば危険かどうかを確認する。
洞窟ならではの演出
暗闇の体験
安全かつ広いスペースがあるホールで全員を座らせ、すべてのライトをオフにすることで日常ではほぼ経験できない完全な暗闇状態になる。この状態では眼の前で自分の手を降っても全く見えない。
手が動いているような気がする場合は、自分の手の感覚から脳が手の位置を推測して錯覚として見えている。
また声を抑えて滴下水の音を聞いても良い。洞窟内で反響する滴下水の音でリラックスできる。
地底湖のライティング
水が澄んでいる地底湖がある場合は、地底湖に防水ライトを沈めて水中を照らすと美しい景色を見せることができる。前述の暗闇の体験のあとにライティングを行うと、暗い洞窟内で突然青く光る水面が現れるため参加者の反応がよい。
泥あそび
泥の多い洞窟では童心に帰って泥遊びをするのも良い。また洞窟の泥は粒子が細かいため、肌に塗ると皮脂を取る効果があるようで泥パックをする女性参加者も多い。(科学的な根拠はないが肌が綺麗な女性ケイバーは多いように感じる)
地底湖・地下河川で泳ぐ
水深が深い地底湖・地下河川がある場合は中に入って泳ぐことができる。腰より深い場所に入る場合はライフジャケットの着用を検討する。また水底に泥がある場合は泥が舞い上がって水が濁ってしまい、場合によっては1~2日間は濁ったままとなるケースが有るため、入るかどうかは事前に検討しておく。
洞窟生成物・洞窟内生物の観察
洞窟では他のフィールドでは見られない生成物や生物が多く存在する。事前調査の際に特徴的なものがあれば場所を確認しておき、ツアー中の解説に盛り込むとツアーに深みが増す。
ツアー後のケア
「終わりよければすべて良し」という言葉もあるように、ツアーが終了した後のケアも参加者の満足度に大いに影響する。ツアーが楽しくてもその後のケアが悪いと体調を崩してしまう場合もあるため、事前に洞窟ごとのリスクを検討して準備しておく。
洞窟外の気温が高い場合は気にしなくても良いが、そうでない場合は衣服についた泥や水による体温の低下に気をつける。速やかに乾いた服に着替えるよう換気して体を冷やさないようにする。洞窟の環境・ツアーのスケジュール次第ではシャワーの導入を検討しても良い。
また周囲の温泉を調べておき、ツアー後に紹介すると喜ばれる。